しよう、と言われて数字の話だと思った。二十五歳の実咲さんは、六と九がどうしたのか本気で分からなかったらしい。
横になって逆向きに乗って、と言われて、ようやく身体で理解した。
上になると、顔の真下に相手が来る。見られている、という感覚だけが先に立つ。
口を動かすと下の刺激が飛ぶ。感じると口が止まる。(あれ、どっちに集中するのこれ……)
どちらも中途半端なまま終わって、しばらく苦手意識が残った。
変わったのは、彼にこう言われてから。イカせなくていい、触り合ってるだけでいい、と。
シックスナインとは、ふたりが頭と足を逆向きに重ねて、同時に口で愛撫する体勢。重なった姿が6と9に見えることから、この呼び名になった。
数字が意味しているのは、向きだけ
6と9が重なった形
互いの顔が相手の下半身に来るよう、逆向きに重なる。この姿を数字に見立てたのが由来。
片方ずつ順番に口で愛撫するのとの違いは、与えることと受け取ることが同じ時間に起きる点。ここが快感の性質を変えている。
同時であることの代償
三十四歳の直哉さんは、やってみて気づいたことがある。相手を気持ちよくしようと舌を動かしているあいだ、自分のものは浅く咥えられているだけになっていた。
角度の都合で、裏筋より上側を舐められやすい。普段のフェラより刺激が弱い。
受ける側にも同じことが起きる。下から上へ舐めてほしいクリトリスを、上から撫でる形になりやすい。
同時に一番気持ちいい体位ではなかった、というのが彼の結論。息継ぎを挟む、指を足す、片方に切り替える。そうやって使うと機能する。
三つの体勢。向き不向きがはっきり出る
女性が上
三十歳の健吾さんの場合、これがいちばん安定した。自分が仰向けなら首が楽で、相手も動きやすい。
ただし体重のかかり方には注意がいる。二十七歳の悠斗さんは、彼女が上に乗った瞬間、鼻が塞がって息ができなくなった。
角度を斜めにして、完全に覆いかぶさらない形に変えたら続いたそうだ。腰を少しずらすだけで呼吸の道ができる。
男性が上
体重が下の人にかかるので、押しつぶす形になりやすい。肘で支え続けると腕が先に限界を迎える。
三十二歳の裕香さんは、腕で身体を支え続けて肩が凝った。相手が大きいと顔の位置がずれて苦しい。
長く続ける体勢ではない。短時間で切り上げるか、別の形に移るほうがいい。
横向き
二十三歳の朱莉さんは、三種類あることを知ってから横向きを主にした。楽な姿勢のほうが、舌が丁寧になるという。
どちらの体重もかからないので、いちばん長く続く。届きにくい角度が出るのが弱点。
健吾さんは、横向きだと相手の脚の内側まで舌が届かず、自分は歯が当たりそうになると話していた。上の脚を少し前に出してもらうと、口の入る道ができる。
身長差があると、形が崩れる
二十センチ差で、絵にならない
差が二十センチある健吾さんたちは、きれいな6と9の形にならない。どちらかが届けば、もう片方が届かない。
届くほうを先に済ませて、同時にやるのは短時間だけ。そう切り替えてから、気まずさが消えた。
無理に届かせると、身体を痛める
三十九歳の浩平さんは、彼女の尻が自分の胸のあたりに来る体格差。届かせようとして身体を反らし、背中を痛めた。
次からは最初から別々に口を使う形にしている。数字の形にこだわると、痛いだけで終わる。
形が崩れていても、口と手が同時に動いていれば、その夜の中身としては足りている。
恥ずかしさを、どう下げるか
顔の真正面に来る、という現実
二十八歳の沙耶さんは、まず恥ずかしさが来た。自分のそこが相手の顔のすぐ前にある。匂い、見え方、脚を閉じたくなる衝動。
閉じたら届かない。だから、照明を落とす。長い前戯のあとに移る。この二つで、だいぶ楽になったという。
シャワーを先に済ませておくと、気にする材料が一つ減る。
声を出すか、黙るか
顔が見えない体勢なので、普段より声が出る人がいる。逆に、声を出すと振動が相手に伝わると気になって黙る人も。沙耶さんは後者だった。
攻めるのが好きな相手は、表情が見えないぶん声を欲しがる。黙っていると、感じているのかどうか判断できない。
短く漏らすだけでも、相手の動きが変わってくる。
見られることの受け止め方
見られている状況そのものが燃料になる人と、それで一気に冷める人がいる。ここは意味を知っても好みが変わらない部分。
パイパンだと視覚の刺激が強く、集中がそちらへ持っていかれた、と悠斗さんは話していた。コスプレの流れでやった夜は、雰囲気に助けられて不器用さが許されたそうだ。
うまくやろうとしないほうが、続く
同時に達するのを狙わない
両方が絶頂を目指すと、集中が割れて両方とも遠のく。片方の口が止まった瞬間に、もう片方も途切れる。
触り合う時間として使う。そう決めておくと、途中で切り上げても失敗にならない。
やめどきを決めておく
終わりのタイミングが曖昧になりやすい体勢でもある。腕が疲れた、首が痛い、息が苦しい。そう感じたら、横に転がる。
直哉さんも、疲れたら転がるだけにしていると言っていた。切り上げ方を決めておくと、途中でやめることに罪悪感が乗らない。
できなくても、意味は消えない
三十二歳の裕香さんは苦手意識が強く、結局、横並びで片方ずつやる形に戻した。
それでも意味を聞かれたら、数字の形と同時のオーラルだと答えるという。できなかった夜があっても、単語の意味は変わらない。
身体のサイズと柔らかさで、同じ言葉の中身が人によってまるきり違ってくる。

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