決まった相手とだけでなく、色んな人と触れ合ってみたいと考えてしまう。世の中の普通の人は一人の相手で満たされているのに、自分だけがおかしいのではないか。
編集部には、誰にも言えない欲求を抱えたまま、自分を異常だと決めつけてしまう大人の声が届きます。同じことを思う人はどれくらいいるのか、思うことと浮気は何が違うのか、行動するなら何を守ればいいのか。
色んな人と性的な行為をしてみたいと思うのは、おかしなことではない
色んな人と性的な行為をしてみたいと思うことは、おかしなことではありません。研究を見るかぎり、決まった相手以外を思い浮かべる人は、むしろ多数派です。
パートナー以外を想像したことがある人は、男性の98%、女性の80%
異性の恋人がいる349人に、過去2か月の性的な空想を尋ねた研究があります。ほぼすべての男性にあたる98%と、女性の80%が、少なくともときどきは恋人以外の誰かを空想していました。男性の場合、空想の半分以上は恋人以外の相手が登場するものでした。
大勢で交わる空想は、最もありふれた空想の一つ
米国で4,175人に性的な空想を尋ねた調査では、お気に入りの空想として最も多く挙がったのは、3人以上で交わるといった複数の相手との性行為でした。何らかの形で集団での性行為を空想したことがある人は、89%にのぼります。ただしこの調査は主にSNSを通じて集めた回答で、米国の人口を正確に映したものではありません。それでも、色んな人と、という欲求が珍しいものではないことは十分に伝わってきます。
新しい相手に惹かれる気持ちは、行ったことのない土地や聴いたことのない音楽に惹かれる好奇心と地続きです。知らない体験への興味が、性の領域にも向いているにすぎません。
普通は一つの型ではなく、幅として存在している
性のあり方の普通は、一人の相手と生涯を共にするという一つの型ではありません。広い幅として存在していて、あなたの欲求も幅の中に収まっています。
合意のうえで複数の相手と関係を持った経験がある人は、米国の独身者の2割
米国の独身の成人を対象にした調査では、21%が、関係者全員の合意のうえで複数の相手と関係を持った経験があると答えました。割合は、年齢や学歴、収入、宗教、地域、政治的立場、人種を問わずほぼ一定でした。調査対象が独身者に限られているため、既婚者を含む社会全体に当てはめることはできない、という指摘もあります。
一人の相手と深く結びつくことに満たされる人もいれば、複数の関係の中で満たされる人もいます。どちらが上等ということはなく、同じ幅の中の違う場所に立っているだけです。
空想することと、実際に行動することの間には大きな距離がある
性的な空想はほぼすべての人が抱いていて、多くの人が試してみたいと考えています。一方で、実際に行動に移す人は3人に1人に満たないと報告されています。研究者自身も、ある空想を抱くことが、実行したいという意味に直結するわけではないと注意を促しています。恋人以外を相手にした男性の空想は、実際の浮気とは結びついていなかった、という結果もあります。思うことと、することは、同じ線の上にはありません。
してみたいと思うことと、実際にすることの間に線を引く
思うことは自由でも、行動に移すなら、大人同士の合意と正直さが条件になります。相手に嘘をつかないこと、そして決まった相手がいるなら二人の約束を先に扱うことが、線の引き方です。
相手に嘘をつかないことが、最初の線
決まった恋人がいない時期に色んな人と関係を持つなら、相手ごとに、自分は一人の相手に絞るつもりがない、と先に伝えておく。伝えたうえで合意した大人同士の関係は、誰もだましていません。相手が特別な関係を望んでいると気づいたのに、あいまいなまま関係を続けることのほうが、人を深く傷つけます。
関係を持つ前に、伝えておきたい三つのこと
一つ目は、関係の形です。ほかにも関係を持つ相手がいるのか、これから持つつもりなのか。二つ目は、最近の性感染症の検査の状況です。三つ目は、コンドームを必ず使うという取り決めです。三つを先に言葉にできる相手とだけ関係を持つ。条件をそろえることで、欲求に正直でいることと、相手を尊重することが両立します。
決まった相手がいるなら、二人の約束が先
決まった恋人や配偶者がいるなら、黙ってほかの人と関係を持つことは、相手との約束を破ることになります。関係者全員が、互いにほかの相手と恋愛や性的な関係を持ってよいと合意している関係は、コンセンシュアル・ノンモノガミー、合意のうえでの非独占的な関係として研究されています。オープンな関係を望むなら、相手に打ち明け、二人が本心から合意できるかを話し合うところから始まります。合意できないなら、関係を続けるか、欲求を空想の中にとどめるか、あなた自身が選ぶことになります。
相手が増えるほど、体を守る準備が要る
関係を持つ相手が増えるほど、性感染症にかかる機会も増えます。欲求に正直に生きるなら、コンドームと定期的な検査を、欲求と同じくらい当たり前のものにしておく必要があります。
梅毒は全国で高い水準が続いている
全国の梅毒の報告数は2016年の4,575件から増え続け、2023年に1万5,055件と過去最多になりました。2024年も暫定値で1万4,663件です。梅毒は、感染した部位と粘膜や皮膚が直接触れることでうつります。感染しても症状が出ないことがあり、治ったあとも再びかかることがあります。
症状がないから大丈夫、という判断は、梅毒には通用しません。自分が気づかないうちに、次の相手へ渡してしまうこともあります。
コンドームと検査を、欲求とセットにする
コンドームはHIVを含む一般的な性感染症の予防に役立ち、ほかの避妊法を使っているときにも着けるよう勧められています。HIVの検査は全国の保健所などで無料、匿名で受けられ、住んでいる地域以外の保健所でもかまいません。保健所によっては、梅毒やクラミジア、淋菌の検査を一緒に受けられるところもあります。新しい相手と関係を持つ前と後に検査を受ける習慣は、自分と相手の両方を守ります。
欲求の奥にあるものを、ときどき確かめる
色んな人としてみたいという欲求の多くは、好奇心や新しさへの興味から生まれます。ただ、欲求が寂しさの埋め合わせになっていたり、自分で止められなくなっていたりするときは、欲求の奥にあるものに目を向けておくと、自分を守れます。
好奇心か、寂しさの埋め合わせか
関係を持ったあと、満たされた気持ちが残るか、それとも空っぽな感じが残るか。求めているのは新しい体験か、誰かに求められているという実感か。欲求の中身を確かめる問いは、欲求を否定するためではなく、自分が本当に欲しいものに近づくためのものです。
欲求を話せる相手を一人持つ
欲求を誰にも言えずに抱えていると、自分だけが特別におかしいという思い込みが強まります。否定せずに聞いてくれる友人やパートナー、カウンセラーが一人いるだけで、欲求は恥ずかしい秘密から、扱い方を考えられる自分の一部に変わります。
抑えられずに生活が崩れるなら、専門家に相談できる
WHOの国際疾病分類は、次のような状態を強迫的性行動症としています。強い性的な衝動を抑えられない状態が6か月以上続き、健康や生活、責任がおろそかになったり、減らそうとしても減らせなかったりして、強い苦痛や生活への支障が出ている場合です。そのうえで、苦痛が道徳的な判断や非難だけから来ている場合は、この条件を満たさないと明記しています。
色んな人としたいと思うこと自体は、病気ではありません。仕事や人間関係が崩れるほど止められないと感じるときは、精神科や心療内科、性の悩みを扱う専門家に相談できます。
欲求を持つ自分を責めるより、欲求とどうつき合うかを選ぶほうが、ずっと楽に生きられます。
よくある質問
色んな人としたいと思うのは、浮気性ということですか?
思うことと浮気は別のものです。恋人以外を相手にした男性の空想は、実際の浮気とは結びついていませんでした。浮気になるかどうかは、欲求ではなく、約束を破る行動をとるかどうかで決まります。
恋人がいるのに、ほかの人を想像するのは裏切りですか?
裏切りではありません。恋人がいる人の中でも、男性の98%、女性の80%が、ときどきは恋人以外の誰かを空想していました。
オープンな関係やポリアモリーとは何ですか?
関係者全員が、互いにほかの相手と恋愛や性的な関係を持ってよいと合意している関係を指します。合意がないまま関係を持つ浮気とは、正直さと合意がある点で区別されます。
複数の人と関係を持つなら、どこで検査を受けられますか?
HIVの検査は、全国の保健所で無料、匿名で受けられます。保健所によっては梅毒やクラミジアの検査も無料で一緒に受けられるので、住んでいる地域の保健所の案内を確認するのが近道です。
性欲が強すぎるのは病気ですか?
性欲の強さそのものは病気ではありません。衝動を抑えられない状態が6か月以上続き、生活への支障や強い苦痛がある場合に限って、強迫的性行動症という診断の対象になります。
欲求を誰にも言えず苦しいときは、どうすればいいですか?
欲求を否定せずに聞いてくれる相手に話すだけでも、ひとりで抱える重さは軽くなります。身近に話せる人がいなければ、性の悩みを扱うカウンセラーや心療内科に相談できます。

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