笑いが止まった瞬間、別のものに変わった
首筋に何かが触れて、反射的に肩がすくむ。
最初は、ただ笑っていた。声を上げて、身をよじって、やめてと言いながら。
それが三十秒くらい続いたあたりで、笑い声が途切れた。
あれ、なんか変な感じ…
最初の十秒は、ただくすぐったい
29歳の女性が、初めて使った夜のことを話してくれた。
電動で細かく震える羽根のような品を、首筋や脇腹に当てた。くすぐったさとぞくぞくが同時に来て、体がよじれたそうだ。
最初は笑ってしまった。続けているうちに体が熱くなってきて、普通に触れられるのとは違う高ぶりを感じたという。
強さを弱くしてゆっくり動かすと、その感覚がはっきりしたらしい。
笑いと熱の境目は、どこにあるのか
くすぐったさは、もともと逃げるための反応。皮膚が薄く神経が集まっている場所に何かが触れたら、身を縮めて離れようとする。
その反射が緩むのは、次に何が来るか予測できるようになったとき。同じ刺激が続いて、危険ではないと体が判断すると、警報が鳴りやむ。
そこから先は、同じ刺激が別の色に変わる。境目はだいたい、この切り替えの地点にある。
だから、最初の数十秒で判断しないこと。笑ってしまうのは、まだ体が構えているだけ。
指では出せない刺激が生まれる理由
細かい振動が、皮膚の表面だけを撫でる
26歳の女性は、この差を感じ取っていた。
耳の後ろや首の付け根に当てると、くすぐったさがすぐ別のものに変わる。振動が細かいので、指では出せない刺激があると。
強くすると笑ってしまうけれど、弱めにするとじわじわ来るそうだ。
指で触れると、どうしても圧が入る。羽根や柔らかい先端に細かい振動が乗ると、表面の受容器だけを連続で叩ける。この刺激は、人の手では再現しにくい。
予測できないから、逃げられない
自分の指で自分をくすぐっても、たいして反応しない。脳が動きを先に把握しているから。
道具の場合、動きに規則性がないぶん先読みしにくい。だから反応が続く。
ここが、この道具のいちばんの持ち味だと思う。
強さより、速さを落とす
強くすると、笑いのほうが勝つ
32歳の女性は、最初の一回で失敗している。
振動が予想以上に強く、脇腹に当てた瞬間に大笑いしてしまった。快より、くすぐったさが完全に勝ってしまい、途中で止めてもらったそうだ。
弱い段階から試すべきだった、と彼女は言っていた。今は強さを抑えて、慣れやすい部位から使っているらしい。
強くすると反射が強く出る。逃げる方向へ体が動くので、熱へは向かわない。
ゆっくり動かすと、じわじわ来る
効くのは、速さのほう。
同じ強さで、動かす速度を落とす。一箇所に長く留めるより、数センチをゆっくり往復させる。
止まっている時間を混ぜるのも有効。当てて、離して、また当てる。離れている時間があるほど、戻ってきたときの感覚が濃くなる。
連続で押しつけ続けると、皮膚が慣れて何も感じなくなる。この道具は、間を作れるかどうかで結果が変わる。
部位で、反応がまるで違う
首の付け根と、耳の後ろ
先の26歳の女性が挙げていた場所。皮膚が薄く、神経が密集している。
熱へ転じやすい代表格だけれど、いきなり当てると反射も強い。頬や肩から近づいて、最後にここへ来る。この順番だと受け取りやすい。
脇腹と足の裏は、上級者向け
34歳の男性は、恋人が買ってきた品を足の裏や太ももに当ててみたそうだ。
くすぐったがって身をよじる反応が可愛くて、自分も引っ張られた。相手は、くすぐったいけど嫌いじゃない、と言いながら、だんだん声が変わっていったという。
笑いと熱が混ざるのが新鮮だった、と彼は話していた。
28歳の男性は、逆にされる側だった。足の裏や脇に当てられて、くすぐったくて身動きが取れなくなった。普段はくすぐりに弱いのに、振動が続くうちに妙な感覚になってきて、そこに高ぶりも混ざったそうだ。
この二か所は反応が最も大きい。同時に、笑いで終わる危険も高い。慣れてから触るほうがいい。
内腿とお腹は、慣らしに向いている
31歳の女性は、一人で使うときにこの二か所を選んでいる。
くすぐったさの後に、じんわりした感覚が残るそうだ。
反射が出にくく、それでいて感覚は届く。最初に試すならここから。
避けたいのは、骨のすぐ上、細い血管が透けている場所、傷や湿疹がある場所。粘膜に直接当てるのも避ける。この道具は表面を撫でるためのもので、内側に強い刺激を入れる作りにはなっていない。
一人で使うと続かない、という壁
自分で当てると、脳が先回りする
自分でやると、たいてい笑って終わる。動きを自分が決めているので、予測できてしまうから。
逃げようと思えば逃げられる。この状態だと、体は警戒を解かない。
それでも工夫している人
先の31歳の女性は、対処法を見つけていた。
自分で当てるとくすぐったくて続かないので、弱い振動でゆっくり動かすようにしている。お腹や内腿なら、くすぐったさのあとにじんわりした感覚が残る。短時間で終わるけれど、気分を変えるのにちょうどいいそうだ。
目を閉じる、部屋を暗くする。視覚を減らすと、先読みが減って反応が変わる。
相手に操作を渡す夜
どこに来るか分からない緊張
30歳の女性は、目隠しを組み合わせた夜のことを教えてくれた。
どこに来るか分からない緊張が加わって、くすぐったさが倍になった。体が勝手に動いてしまい、相手が笑いながら続けてきたそうだ。最後はくすぐったさを超えて、かなり高ぶっていたという。
視覚が消えると、皮膚の感覚に意識が集中する。予測もできなくなるので、この道具とは相性がいい。
目隠しを足すなら、決めておくこと
ここは書いておきたい。
視界を奪う、あるいは動けない状態にする遊びは、止める合図が先に決まっていることが前提になる。言葉が出せる状態なら短い一言で。声が出しにくいなら、手を二回叩くといった動作を決めておく。
くすぐりは、笑いながらやめてと言う場面が出てくる。この言葉が本気かどうかを判別しにくいのが、この遊びの難しいところ。だからこそ、笑い声とは別の合図を用意しておく。
呼吸が苦しくなるほど続けない。笑い続けると息が上がる。相手の呼吸を見ながら、必ず間を作る。
手足を縛る形にするなら、すぐ解ける方法を確保しておく。ここが確保できていないなら、目隠しだけに留めるほうがいい。
くすぐりが苦手な人でも使えるのか
笑いすぎて止めてもらった夜
先の32歳の女性のように、笑いが勝ってしまう人はいる。
これは体質の差で、どちらが良いという話ではない。反射の強さは人によってかなり違う。
苦手な部位を外せば、変わる
全身が苦手な人は、実は少ない。たいていどこかに偏っている。
脇腹と足の裏を外すだけで、印象がまるで変わる人が多い。背中、腕の内側、肩甲骨のあたり。この辺りから試してみる。
苦手なままなら、無理に続けなくていい。合わない道具を我慢して使う理由はどこにもないので。
他の道具と組み合わせる
先に体をほぐしておく順番
27歳の女性が、面白い使い方を教えてくれた。
くすぐりの道具で体を敏感にしてから、いつも使っている振動する品へ移ると、感度が上がっているのが分かる。くすぐったさで体がほぐれた後のほうが、届き方が違う気がするそうだ。
血の巡りが増えて、神経も反応しやすい状態になっている。前段として使う、という発想は理にかなっている。
併用するときの注意
潤滑ジェルを使うなら、羽根やブラシの部分に付けないこと。素材が絡んで乾きにくくなる。
水溶性のジェルを選んでおくと、他の道具と合わせるときに扱いやすい。シリコン製の品にシリコン系のジェルを合わせると表面が傷むので、そこは分けて覚えておきたい。
初めて使うジェルは腕の内側で試して、ヒリつくようなら別のものへ。
買う前と、使ったあとに見るところ
先端の素材と、洗える形か
羽根やブラシの部分が取り外せるかどうか。ここは確認しておきたい。
外せない品は、汚れが溜まったときに手が出せない。素材によっては水に濡らせないものもある。
肌に触れる部分がシリコンなら、洗って乾かすのが楽。柔らかい毛の素材は、乾きが遅いので風通しのいい場所に置く時間が要る。
届いた品が強い臭いを出している、表面がべたついている。そういう場合は使わないほうがいい。
音と、しまう場所
細かく震える品なので、独特の高い音が出る。壁が薄い部屋なら、寝具の中で使うか、何か音を流しておくと気が散らない。
電池式なら予備を用意しておく。途中で止まると、あの空気が一気に抜ける。
保管は埃のつかない袋へ。毛の部分は埃を吸いやすいので、剥き出しで置かないこと。他の品と重ねると素材同士が反応してべたつくことがある。
笑いながら熱が上がる、という体験
この道具の面白さは、笑いと熱が同じ時間の中に混ざるところ。他の品では、この組み合わせは出てこない。
強くしないこと。速く動かさないこと。苦手な場所を外すこと。この三つを守れば、たいていの人が境目までたどり着ける。
そして、止める合図を先に決めておく。笑いながらのやめては、判別できないから。
笑い声が途切れて、部屋が静かになる瞬間。あれを一度でも経験すると、この道具の意味が分かる。

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